中小工務店の集客に足りないのは「言葉」だった!?~魅力を伝える「機会」と「言葉」を、家づくりに詳しいライターが紹介(実例付)~
地域密着型の工務店として頑張っている皆さん。自社の魅力を地域のお客様にちゃんと伝えられていますか?
今回は、“工務店×お客様”のマッチング企業での勤務経験があるライターが、工務店さんの「伝わる力」をアップするために考えた工夫ポイントを紹介します。
「どんな家でも建てられます」は何も言っていないのと同じ
以前、地域の工務店さんと家づくりを考える人をマッチングする相談センターで、働いていたことがありました。
地域にあるいろんな工務店さんの中から、お客様に合った工務店さんを紹介するために、各工務店さんに訊いて回ったんですよね。
「どんな家を建てるのがお得意ですか」
「どんなことにこだわって家づくりをされていますか」
って。
すると、大半の工務店さんが
「お客さんの要望に合わせて、どんな家でも建てられますよ」
そうおっしゃるんです。
一見優しくて素晴らしい回答に見えるのですが、お客様に選んでいただくための言葉になっているんでしょうか…。
確かに、それは事実。
家づくりはお客様主導なので、実際はお客様の要望に合わせて、できる限り希望を叶えられるように進んでいくのは分かるのですが。
「どの工務店に依頼しようか」と、多くの候補の中から自分に合う工務店を探している人に「何でもできます」という言葉が、果たして響くんでしょうか。
「要望に合わせてどのようでも対応しますよ」という話は、お客さんと具体的に話せるところまでこぎつけてからすればよいと思うんです。
でも、他と比べられている段階では、よりハッキリと分かるような「我が社はこんな工務店です!」という特徴が必要です。
住宅カタログやチラシなどでも「お客様のご要望に合わせ、心のこもった家づくり!」などというフレーズを見かけますが、結局どのお客様からも興味をもってもらえていないのでは?と心配になってしまいます。
「何でもできます」は、何の特徴も伝えられていないのと同じ。あなたは、自社の特徴をちゃんと言葉にしていますか?
「施主」「〇〇工法」「建ぺい率」…。お客さんに通じていますか?
相談センターでの勤務が始まり、工務店さんと話すようになった頃、私は初めて聞く言葉が多くて戸惑いました。
当時は自分でも家を建てたい時期だったので、自分なりに家づくりの勉強を始めたところだったのですが、それでも分からない言葉がいっぱい。
「おせしゅさんが…」と言われ、どんな漢字がハマるのかも分からない。誰のことを言っているのかも分からない。
「建蔽率」という漢字を見ても、言葉の意味どころか、読み方すら分からない。
「うちは軸組み工法だから」「うちは2×4工法だから」と言われても、「だから」に続く特徴やメリットが分からない。
「そこ、共通認識じゃないですよ。もっと分かるように話してもらえたら…」と思っていました。
でも、工務店さんにしてみたら、普段から使っている言葉であり、おそらく相手がそれを理解できないという考えに至らないのかなと思います。なのであえて釘を刺しておきますね。
「お客さんは、家づくりの素人。分かる言葉を探して説明してあげなきゃ通じないですよ。あなたが予想しているより、分かっていないこと多いですよ」。
分からない言葉ばかりで説明されたら、お客さんはどうすると思いますか?
いちいち聞き返してくれるのは相当粘り強い人だけ。たいてい、そっと離れていきます。そんなことで依頼のチャンスを逃したくないですよね。
自分たちだけにしか通じない言葉をお客さんに向けて使っていないか、常に意識していきましょう。
家づくりの現場こそ、「次」を得るチャンスの場
そして始まる家づくり。実はここでの地道な活動が、次のお客さんを呼んでくる大きなチャンスとなります。
注文住宅だと3ヶ月~半年近く、その場にいるわけです。その間に施主さんはもちろん、周辺住民の方と良い関係を築くことが、次の依頼を呼んできます。
まずは工事に入る時に、周辺のお宅にご挨拶に行きましょう。
顔を合わせて話ができれば一番良いですが、苦手な方もいるでしょうし、ビラをポストに入れてくるだけでも随分違うと思います。
ビラには、工事の期間、自社の自己紹介、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いしますの気持ちを書いて、自社のリーフレットやパンフレットと一緒に入れます。
これで少なくとも、誰が工事に入っているのかが分かり、自社の名前を知ってもらえます。
周辺住民の方がちょうどリフォームを考えていたり、お子さんが家を建てる時期だったりという可能性も十分に考えられます。その時、隣で工事をしている工務店が“いい感じ”だったら、少し話をしてみようかな、となりますよね。
逆に“感じが悪い”と思われたら次は無いので、普段から丁寧な態度で仕事にあたるよう、徹底しておきましょう。
そしてもうひとつ、施主さんに自社を紹介してもらう、ということも、着実に狙っていきましょう。
施主さんが自社の家づくりに満足してくださったら、きっと力強い応援団になってもらえます。周りに家づくりやリフォームがしたい友人がいた時にスムーズに紹介いただけるように、自社のリーフレットやパンフレットなどを数部、渡しておきましょう。
また、OB訪問の希望があれば受け入れていただくことや、完成見学会の実施、ホームページに「お客様の声」として掲載させていただくことなどの了解も取り付けに行きましょう。
ここは意外とタイミングが大切で、全てが終わって行き来が少なくなってからでは反応が悪くなります。工事をしている間、定期的に通って関係を密にし、良い関係が築けた完成間近の頃にお話するのが良いでしょう。
その頃にお客さんから「完成は嬉しいけど、工務店さんともうお話できなくなるのは淋しいな」と思われるくらいの関係ができていたら、素晴らしいですね。
もったいない!言葉足らずな完成見学会
家が完成した後、お客様の協力で行われるのが完成見学会。
これから家づくりをしたい人にとっては実際の家そのものが見られるのでとても重要ですし、工務店側にとっても依頼獲得の絶好のチャンスです。
ここでしっかりと、自社の魅力を伝えたい!のに、あれあれ…。完成見学会にお邪魔して「スマートすぎる!静かすぎる!」と8割がた感じてしまうのは私だけでしょうか。
「各コーナーに、魅力を書いたポップを貼ってまわりたい」という気持ちがムクムクと沸いてきてしまうのは、職業病かもしれませんが(笑)、サラッと見て、何がポイントなのかよく分からず帰ってくるような完成見学会も多くて、残念に思います。
最近は、しつこい営業トークは嫌われるという認識が広がっているのでしょう、こちらから話しかけなければ前のめりに話しかけてくる営業マンは少ないですし、そもそも少数精鋭の工務店では、はじめから終わりまでお客さんに付いて説明するマンパワーも無いのかもしれません。
だったら!だからこそ!
魅力を書いたポップを置くなどして、言葉に魅力を語ってもらいませんか?
間取りの工夫、動線の工夫、工法、色遣い、材質…。
本当は伝えられることがたくさんあるはずです。訪れた人も、それを読むことで理解が進んで、具体的な質問が生まれたり、話しかけやすくなったりするでしょう。
地域の工務店さんという「身近な存在」感を価値として出したいなら、パソコンなどでスタイリッシュにまとめるよりも、筆文字や手書きで書く方が、目に留まり、親しみも持ってもらえると思います。
ほら、手描き上手なスタッフさんいませんか? つかまえて書いてもらっては?
ちなみに、自社のモデルハウスの場合も同じです。
「見たら分かるでしょ」という姿勢では、ほとんど何も伝わりません。お客さんは家づくりの素人なので、できるだけ言葉にして、魅力を知ってもらいましょう。
最後は社長であるあなたへの信頼感
いかがでしたか。
今回紹介してきたことは、
「自社のこだわりを言葉で示す」
「分からない言葉を使わない」
「近隣住民へ認知を広げる(工事の案内や会社案内をお渡し)」
「完成見学会・モデルハウスで工夫を紹介(ポップを書く)」
と、小さいことですが、すぐ行動に移せることばかり。ぜひ取り組んでみてくださいね。
ちなみに普段私が、言葉の仕事をする者として工務店さんから依頼を受ける仕事は、以下が多いです。
- 施工事例(お客様の声)のインタビュー取材&文章作成
- 社長挨拶文のインタビュー取材&文章作成
- リーフレットやパンフレットの制作
「家づくり」に対する工務店さんのPRというのは、ひとつ大きな特徴をもっています。
それは、売る相手が家づくりに対して素人なことがほとんどであるにもかかわらず、一生で最大ともいえる大きな金額の買い物だということです。
だからこそ、お客さんもいろいろと調べますし、比較します。その時に上記の3点はやはり、必須アイテムであることが多いんですよね。
その上でお伝えしたいのは、
「上記3点PRツールそろえたとしても、最後はあなたへの信頼感!」
ということ。
常日頃から、お客様の顔を見て、話をよく聞いて、自身の想いを伝えることを大切にしてください。
地域の工務店に家づくりを依頼するということは、その先何十年分も使う、大切な暮らしの拠点づくりを任せる、ということなのです。社長の人間性が信頼できなければ頼めません。
PRツールはそろえたうえで、今回書いたような言葉の気配りをしながら、次のお客様のために今のお客様を大切に、事業を進めていきましょう。言葉工房トムが力になれることがあれば、いつでもご相談くださいね。
今回のPOINT
- 「何でもできます」ではなく、自社ならではの特徴を示す
- 一般の人に伝わらない言葉を、当たり前のように使わない
- 現場での施工時や完成見学会を最大限活用する
中小企業を言葉のチカラでサポート
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