伝わるPR クリエイターインタビュー③ ホームぺージ制作の「伝わる」~スマホの流し読みが多い時代に~

クリエイターさんたちに、各分野での「伝わる」ための工夫をお聞きする「クリエイターインタビューシリーズ」。第3回はWebエンジニアの金原沙保理さんに「ホームページの制作」についてお話を伺いました。

彩華ITサポート 金原沙保理さん(Webエンジニア)

【プロフィール】
名古屋市の企業でSE(システムエンジニア)として勤務後、2019年に「彩華ITサポート」として独立。自営業・個人事業主のITサポートを事業とし、ホームページの制作、メンテナンスなどを実施。WordPressを使った「自分で更新できるホームページ」の制作をメインとして事業を展開している。愛知県豊田市。
*ホームページはこちら

言葉工房トムのホームぺージも制作していただきました。ありがとうございます!

ホームページ制作の依頼時に何が必要?

"伝わる"ためのポイントとは?
  1. ホームページ制作をwebクリエイターに依頼するとき
  2. Webクリエイターが制作物を作るとき
  3. 一般の人が自分でホームページを作りたいと考えたとき

田代(以下、「-」と表記)「伝わるPR」がテーマのシリーズなので、ホームページ制作の「伝わる」について、上の3つの場合それぞれに意識すると良いことを、アドバイスをいただけたらと思います。まずは①「ホームページの制作をwebクリエイターに依頼するとき」に、こんな風にすると伝わるよ、というアドバイスをお願いします。

金原 ご相談いただく時には、2つのものを用意いただくとスムーズに進みます。【こんなページ構成で行きたいという希望】と、【これまでに自分のことを伝えてきた、ありとあらゆるもの】です。

―いきなりページ構成の希望を出すというのは難しそうに感じますが、金原さんのお客様は皆さん、初めから的を射たページ構成をお出しになっていましたか。

金原 お金を払ってホームページを作りたいという時点で、皆さんある程度しっかりとした考えはされているように思います。すごく的外れな依頼はほとんどありません。それでも、抜けている部分やもっと出していくべきことなどは見つけられるので、ご自身の情報をたくさん提供していただきながら、バランスの整った構成を一緒に考えていきます。

―ページ構成を考えるのが難しい人は、どうしたら良いでしょうか。

金原 競合他社のサイトを見てみると、いろいろとヒントが見つかると思います。あとはとにかく、自分がホームページにどんなことを載せていきたいのかを、箇条書きで書きだしてみること。そうすると、少しずつ整理でき、構成もイメージできてくると思いますよ。

―自分の情報というのは、具体的にどんなものですか。

金原 ホームページ作りが初めてではない人はこれまでのホームぺージ、ブログを書いていた人はそのブログ、SNSを頑張っている人はInstagramやFacebook、Xなどのアカウントを教えていただくとありがたいです。また、リーフレットや名刺など紙モノも含めて、私の場合は、多く情報をいただけるほど良い制作につながると感じています。ホームページってお客様の全体像を集約したものですから。

―そうすると、私たち(依頼する側)が用意するべきは、素人ながらも一生懸命考えた設計図とたくさんのネタですね。ガンダムで言うとホームページは心臓部、全ての源という感じですかね。

金原 ガンダムに心臓があると言えるかどうかは要審議ですが(笑)、考え方は合っていますよ。ホームページが心臓、SNSなどの1投稿ずつが毛細血管という感じですね。読む人は心臓から手足の毛細血管へ行ったり、そこから心臓部へ帰ってきたりします。だからホームページは、あるべき情報がきちんと関係性を整理されて並んでいるのが大切なんです。

Googleも言う「モバイルファースト」、スマホを意識しよう

スマホを指さす

―では次に②で、依頼を受けた金原さんが、お客様にちゃんと「伝わる」ホームページを作るために意識していることを教えてください。

金原 まず第1に、スマホで見るものだとしっかり意識する、ということです。ホームページを作る仕事においても、この辺は時代とともに大きく変わったところです。今や検索大手のGoogleでさえも“モバイルファースト”と言っています。スマホで見るのが大前提、そこを意識したうえで、パソコンで見る場合にも見やすくね、というような優先順位がホームページ制作の標準です。

―スマホで見るということを意識すると、具体的にどういう点に気をつけて作ることになりますか。

金原 皆さんもそうだと思いますが、スマホはパソコンと比べ、流し読みの層が圧倒的に多いです。指でスクロールして、画面をささっと見ていくようなイメージですよね。となると必要なのが、流し読みの人にも目に留まり、読む気になってもらうような構成と見出し作りに注力すること。画像も絶対に添えるようにしています。

また、あまり凝ったデザインにしないように心がけています。そもそもスマホでもきれいに表現できるデザイン処理は限られていますし、凝るほどにデータ量が多くなり、表示まで時間がかかるとお客さんは離れてしまいます。

トップページこそ、構成をシンプルに

ホームページを紹介する男性

―私個人的には、素人が作るのとプロが作るのの違いが一番よく出るのがトップページじゃないかなと思っているのですが、トップページについて工夫していることはありますか。

金原 トップページは、他のページとは役割が違います。本に例えると、表紙であり、目次であり、導入。だから、トップページですべてを語ろうとしなくて良いんです。大切なことだけをキュッとまとめて、各ページへの橋渡しをすること。それが自然な流れの中でできることが大切です。

―トップページとして失敗だなと思う事例は、どんなものですか。

金原 1つ目は、各ページへのリンクがうまく貼れていないもの。技術が云々という話ではなく、読んだ人が自分の興味がある場所にちゃんとたどり着けないという話です。トップページの流れと、ホームページ全体の構成とのバランスが悪いということになります。

2つ目は、トップページにいろいろと書きすぎてしまっているもの。先ほど話した通り、トップページは入口の役割です。もう1つ大きな特徴があり、トップページから入る閲覧者が圧倒的に多いということです。

あなたの事業への興味の度合いは、人それぞれ。しっかり興味のある人もいれば、たまたま訪れただけで興味が浅い人もいます。トップページだけを見て帰られてしまうか、その先を読んでもらえるか。興味が浅い人も引き込もうと思うなら、トップページにすべてを書くような勢いで詰め込むのではなく、いかに見やすく構成するかが大切です。

ホームページは更新で鮮度をアピール

パソコンとボールペン

―金原さんのホームページ制作のキャッチコピーが「自分で更新できるホームページ制作」ですよね。「自分で更新できる」ということが、ホームページ運営において大切という考えですか。

金原 ホームページ運営にとって何が大切か、という視点で行くと『自分で更新できる』というより『常に何かしら更新されている』ということが大切だと感じています。
作っただけで放置されているホームページはよくありますが、それを見てどう思いますか? 今も営業しているのかな?とか、今でも同じ事業内容なのかな?と不安になりませんか。疑念を持ったまま、そこを利用しようと思うでしょうか。

―せっかくホームページがあっても、「今の情報」としての信頼性が無いと、価値が著しく下がってしまうんですね。それを避けるために、自分で更新できるようにして、鮮度を上げるわけですね。

金原 自分で出来ずに毎回制作会社に頼む、となると、どうしても更新頻度が下がってしまうので。コラムやブログを定期的に更新していただくのが良いと思いますが、そこまで難しい場合は『お知らせ』のページを作るようにしています。『お知らせ』になら、わりとどんな内容でも入れやすいですから。

また、SNSの投稿を頑張っている人の場合は、最新の投稿がホームページにも反映されるように作ります。そうすればホームページ用に何かをわざわざ投稿しなくても、生きているホームページだとちゃんと感じてもらえます。

無料サービスを使って自作してみよう

Web design

―それでは最後に③の質問です。自分でホームページを作りたい場合を考えてみます。そもそも、ホームページを自分で作るのは無謀だと思ったりはしませんか。

金原 自分で作ってみるのは、とても良いことだと思いますよ。先にお話したように、自分で作ってみることで、感じたり理解できたりすることがたくさんあります。完成まで自分で作れる方もいますし、もし途中までで難しいと感じたら、それから私たちに依頼されるのもアリだと思います。

その場合も、自分でやってみた経験がある方は話がスムーズですし、途中まで作ったものをもとに作っていけるので、全くゼロから始めるよりは良いものが出来上がることが多いです。

―自分で作る場合、どんなツールを使って作っていくのが良いでしょうか。

金原 今は、無料から始められるホームページ作成サービスがいろいろとあるので、使ってみると良いと思いますよ。有名どころだと、Wixジンドゥーペライチなどです。

『デザインの自由度が高いけど操作性が良くない』とか『簡単に作れるけれどありきたりに仕上がる』とか、それぞれに特徴があります。いくつか使ってみて、自分に合うものを選んで進めていくと良いですよ。

個人的には、先ほどの『常に何かしら更新されている』ことが大事だと思うので、ある程度のページ数まで無料で作れるサービスが良いかなと思います。ブログ機能を備えているサービスだと、多くのページ数作れることが多いですね。

―金原さんは、WordPressを使って自分でホームページを作る講座も行われていますが、WordPressで作るというのはどうでしょうか。

金原 講座を受けられて、自分で作り上げ、今も更新しながら運営されている方もいらっしゃるので、作れるとは思います。難易度はわりと高めですかね。見た目や構成がしっかりしたホームページを目指したい方にはお勧めです。ブログ更新機能もありますよ。

独自ドメインやSEO対策は?

ホームページとSEO/Google/Click

―私のような素人としては、「独自ドメインを取るべき」とか「SEO対策をすべき」とか、聞きかじりの情報がいろいろと気になります。そのあたりについて、アドバイスはありますか。

金原 独自ドメインを取るかどうかは、ホームページを作った先に何を目指すかで変わってきます。独自ドメインを取ることの一番の価値は、信頼感が増すことだと思いますが、その分お金もかかります。企業相手の仕事が多いとやはり欲しいかなと思いますが、別に必要ないと感じるなら、わざわざ取らなくても良いですよね。

―お客さんになるお相手が、そこを判断基準のひとつにするかどうかという視点で見ると良いかもですね。SEO対策についてはどうですか。

金原 ひと口にSEO対策といっても、トレンドはどんどん変わってきているんですよね。ひたすら他ページからのリンクを増やすとか、検索ワードになりそうなものを連ねるとかは、ひと昔前は効果もありましたが、今はあまり意味が無いです。

今は、検索をした時に求める情報がちゃんと出てくることが大切にされているので、コンテンツの中身が大切。お客様になってほしい人たちはどんな人で、どんな言葉で検索をするのかを、想像力を働かせて考えることです。それが今の時代のSEO対策と言えるのでは。

―もっと技術的というか、コツというか、そういうものがあるのかと思っていました。ライターである自分としては、シンプルに中身勝負とは、嬉しい時代になったなと感じます。検索する側に立ってみても、それがあるべき姿ですよね。

金原 そうですね。私たちは暮らしの中で知りたいことの答えをネット上で探し、それに答えを渡せるホームページが重宝されるわけですからね。だからこそ、自分の事業を伝えていこうと思ったら、まずはホームページがあることが大切な時代ですし、ちゃんと更新を続けて生きているページだと示すこともとても大切なんですよね。

ホームページを作るのは、SNSにひとつの投稿をすることと違って、とても時間がかかりますし、いろんなことと向き合います。自分の事業の目的や魅力は何か、それを伝えるためにどんなパーツで構成するのか。
疲れる時もあると思いますが、それを経て完成したものがスマホやパソコンで表示されたときは、嬉しさもひとしお。私も、お客様のホームページではありますが、その瞬間の喜びを目指して作っているという点では同じです。

まずは自分で考えて、手を動かしてみて、難しくなったら相談いただきながら、皆さんの事業の「心臓部」を、ぜひ想いを込めて作ってみてください。応援しています!

―ありがとうございました。

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金原さんには実際に言葉工房トムのホームページも制作いただきました。その時も感じたことですが、今回のインタビューでも、とても話が整理されていて分かりやすいこと、細かなところまで行き届いていることを感じました。その理由が、今回のインタビューで分かりました。

それはSEだった会社員時代、お客様と話して要求を引き出し、それを機能として分解し、整理して組み立て直す、ということが重要な仕事だったこと。それをSE業界では「要件定義」と言うそうですが、その得意な部分を生かしてホームページ制作もされているのだなと感じました。ライターの、取材から文章制作までの流れと似ている部分もあるなと、興味深かったです。(田代)

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